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2005.01.23

『海ちゃん、おはよう』 椎名誠著 by 頑固な文庫読者

椎名 誠著: 海ちゃん、おはよう(朝日文庫)

独り者なので、経験から来る共感というものは全くない。
それでも、著者の数あるサラリーマン時代前後の物語の、見えなかった側面を目を細めながら眺めるような、そんな印象。
多分そうなんだろう。
きっとそうするだろう。
なんてことを、まるで追体験するように、主人公の目となり、耳となり、腕となって、生まれてきた子供とともに生活していくのだが。
実際には、子供の成長を追っているようで、自分の変化を記録しているといってもいい。子供は家族にとって一番の大きな変化であるから、必ず親の生き方は変化する。何かを糧にして、何かを犠牲にして、何かに力を入れ、新たに何かに挑む。同様に、他の家族や社会にも関わることとなり、繋がりの範囲が広がっていく。
主人公が契約社員から正社員になって結婚前の夢から遠ざかってしまうのも、そういう変化の一つ。正社員という堅苦しく規則正しいモノに安心感を覚えるのも、新しい家族に対する心構え。
では、夢が消えてしまうことになるのかというと、そうではない。現実の家族は、少なくともこの夫婦は(本書の最初に出てくる2人それぞれの夢が実際の夢だったとすれば)実現させているのだ。

ここからは文章について。
読んでいて「この文はいいなぁ」と思う部分が何ヶ所もあった。

・・・叔父さんは自分の食べていたキュウリのおしんこを箸に掴んで空中にかざし、
・・・「わあ、これはワニみたいだな。ワニそっくりだよ」

・・・母親はなみえと殆ど同じ目をしていた。シルクロードのような目である。

エピソードとしてもそうだし、表現もそうだ。とてもじゃないけどできないなぁ。


『海ちゃん、おはよう』
椎名誠著
朝日文庫 ISBN4-02-264329-3
本体560円+税

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