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2005.02.13

『神様がくれた指』 佐藤多佳子著 by 頑固な文庫読者

佐藤 多佳子著: 神様がくれた指(新潮文庫)

 出所したばかりの男が、同業の若い男の技にしてやられ腕を痛めてしまう。それを助けた人物はタロット占い師。助けられた男はスリ。

 はたから見れば、2人は世の中から外れた世界を生きている。自分の生き方をしようと。
 お互いの生活に干渉しようとはせず、でも気になってしまう。
若い男を追うスリ。占い師が気にかける少女。スリに心を寄せる幼なじみ。スリの宿敵である刑事。それぞれの線がどこかで交わる時に、物語が急速に展開しはじめる。

 この物語の主題は、おそらくコミュニケーションとは何なのか、ということだろう。
スリと占い師。スリと幼なじみ。占い師と少女。スリと刑事。もちろん脇役である人々とも。
 人間は人の心を正確に読む力は持っていないので、言葉を使ってやりとりをし、それを推し量るのが最も力のある方法である。おそらく、著者のメインとなるテーマはここにあるのだろう。
 以前に出された『しゃべれどもしゃべれども』という小説においても、同じである。

 しかし、そのコミュニケーションが、実はそれほどあてにならないことも物語の中で明らかにされる。幼なじみの行動によって。

 人と人との関係において大切なのは何なのだろう。
 ごく普通のコミュニケーションによって伝えられるモノ、伝えることができるモノは、本当はそんなに多くなく、無力な手段としてしか考えられないのだろうか。自分が自分であるために、コミュニケーションは二の次三の次の地位に甘んじるしかないのだろうか。
 言わなくても分かる。そういう世界は幻。でも、ある時、ある瞬間にその世界が出現する。言葉と言葉以外のコミュニケーションによって。それはタロットカードが示してくれるのかもしれないし、財布をかすめる指先が訴えるのかもしれない。

 神様がくれた指、とはスリの指のことか?
 それとも占い師がタロットをひくための指のことか?

 おそらく、誰もが持っている「自分が自分であるための『何か』」を指すのだろう。

 問題は、それに気が付くか否か、なんだろう。


『神様がくれた指』
佐藤多佳子著
新潮文庫 ISBN4-10-123733-6
本体819円+税

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