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2005.04.24

『笑伝 林家三平』 神津友好著 by 頑固な文庫読者

神津 友好: 笑伝林家三平

 言われているほど強い印象はない。
 亡くなったとき、僕はまだ学生であったはずだ。数ある有名人の訃報という以上のものではなく、すぐに忘れてしまう事柄の中だった気がする。
 でも、とてつもない人気だったとか、昭和の爆笑王だとか、そういう情報が強くインプットされていると、実際の芸を見ていなくてもそういうものだと思ってしまうのだ。

 落語の歴史はよく知らないが、このころの落語家の世界は、伝統から大きくはみ出ようとする者達が登場し、混沌とした時代だったのかもしれない。古典落語のシステムの中で異なる笑いを追う者の苦難。後のない芸を続けていかなければならない苦しみ。

 しかも、父林家正蔵の息子としての重圧はそれに輪をかけていただろうと思う。
 人気が出て、独自の笑いをつかもうとしているときでも、消すことのできないこと。

 本書に出てくるエピソードは、それぞれが林家三平の人柄を表し、芸を表している。ただ、残念なことには、僕の記憶がないために、動く林家三平になってくれないのだ。
 「どぅも、すいません」
 逆に言わねばならぬ。

 脳内出血から復帰し、新作「源氏物語」を通すよりもウケをとってしまったとき、
 「・・・、一生お客様に負けてきたと思います。・・・」
と作家にいう言葉に、言い尽くされている。
 負けたくなかったのだ。笑いで負けたくなかったのだ。
 手段を選ばず、古典にとらわれず、ただ自分の芸で笑ってもらうために。

 笑ってもらっていても、ずっと負け続けていたと思っていたことだけが、心残りだったのではないか。
 でも、勝てなかった人はもう一人いる。香葉子さんである。

『笑伝 林家三平』
神津友好著
新潮文庫 ISBN4-10-117231-5
本体476円+税

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