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2005.04.01

『春の数えかた』 日高敏隆著 by 頑固な文庫読者

日高 敏隆著: 春の数えかた(新潮文庫)

 自然科学は観察の科学。しかし、観察は感性である。

 春夏秋冬。自分の周りは自然の周期にしたがって花が咲き、蝶は飛び、鳥は羽を広げ、虫は鳴く。はたして、それに気がついているか。人間もその一員でいるにもかかわらず、自然に対する五感を閉じていないか。

 例えば、冒頭の「春を探しに」では、新春という言葉と実際のの春の現れについて書かれている。風まだ冷たいのに新春というのに、何が春なものか。なるほど、僕もそう思う。でも、著者の目には植物や虫の姿が写り、確実な春の到来を知る。
 生き物が精密な機械のごとく、巡る季節のタイミングを計っているとは、人間よりも高度で驚異の適応能力である。

 このような観察は、その人の持つ感性による。
 自分の周りにさえ注意を払わない人は、花や虫や風の変化さえ気がつかない。アスファルトやコンクリートの囲まれている生活に、自然を象徴するモノが失われていくのは仕方のないことかもしれないが、この本を読むとそういう考えが根本的に間違っていることに驚くのだ。

 さらには、我々が「自然」と思う環境が、いかに「手を入れられた」疑似自然であるのかということも明らかになる。
 心地よい自然のみが、我らが求める自然という可笑しさ。

 見ること、感じること、考えることが、本来の姿を判断するための重要な材料となる。たったそれだけのことが、十分に面白く楽しいことであることをいつの間にか忘れてしまった。あるいは、知ることなく大人になってしまったのかもしれない。

『春の数えかた』
日高敏隆著
新潮文庫 ISBN4-10-116471-1
本体400円+税

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