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2005.04.14

『黒い天使』 コーネル・ウールリッチ著 by 頑固な文庫読者

コーネル・ウールリッチ: 黒い天使

 「金網はあの人の顔を小さな升目に分け、私には一度にひとつの升目しか与えてくれなかった」

 なんとまぁ、胸が締め付けられるような文章だろう。(もっとも、原文ではなく訳者の力もあるだろうけど)
 コーネル・ウールリッチといえば、こういう甘く切なく、しかも、焦燥感の合わさった、何ともいえない口調。思う存分ひたることができる。

 夫の愛人に会うために彼女の部屋を訪れる妻。しかし、彼女はすでに何者かに殺されていて、夫が容疑者として捕まり、死刑を宣告される。妻が部屋から持ち出した彼女の手帳を元に真犯人を捜すのだが・・・。

 いわば、タイムリミットものではあるが、そういう緊張感は薄い。かわりに、妻が真犯人と思われる男に会い、会話をするときの心の動きに焦点が当たっている。読者は主人公とともに、揺れ動く心を共有することになるのだ。

 「まもなく夜が明けるはずだった。ニューヨークはまた一晩歳をとった」

 あぁ、なんてこった。
 こういう細かい言い回しが、あちらこちらにちりばめられて、どんどん主人公の心に近づいていく。
 そして、事件は解決するように見えて、違う苦悩が未来の破滅を暗示させる。なんともやるせない。甘く切ない焦燥感は、読後も引きずることになるのだ。

 コーネル・ウールリッチ=ウィリアム・アイリッシュのファンであれば、読んで間違いない。というか、読め。

『黒い天使』
コーネル・ウールリッチ著
ハヤカワ文庫 ISBN4-15-070606-9
本体760円+税

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