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2005.05.05

『優柔不断術』 赤瀬川原平著 by 頑固な文庫読者

赤瀬川 原平: 優柔不断術

 決断力のある人は、かっこいい。尊敬に値する。
 優柔不断な人は、かっこわるい。ダメな人。

 でもそうか?

 とりあえずビール2本くらいで、上座を譲り合って、それじゃまぁそういうことで、なんて言っていませんか。
 ちょっと待て、それがいかんのか? どこがいかんのか?
 ことあるごとに決断を迫られ、息つく暇無く決断を続け、決断の上に決断を重ねていくことは、はたして人間のすることであろうか。

 原平翁は、既に歳をとるごとに発揮される物忘れや能力の変化を「老人『力』」として定義し直すことによって、新たに「意義のある力」を世に知らしめた。
 そして今、日本人の本質でありながら忌避される「優柔不断」な考え方を、『術』として定義することで、「ワザ」としての優柔不断を知らしめるのである。

 本書は二つの部分に分かれている。第1部は、いろいろな場面で発揮される優柔不断とその本質を表している。第2部は、いわば原平翁における優柔不断のできあがり方、といえる。
 第1部では、驚くほど鋭い視点で「優柔不断」が我々の生活を支えているか、をいろいろな場面の中で説明している。いやもう、付箋貼りまくり。いいではないか。日本人で良かったなぁ。

 ところが第2部。
 生い立ちと優柔不断が絡み合う自分史、みたいなものなのだが、やはり筆先が鈍るのだろうか。ちょっと奥歯に物が挟まったような書き方になっている。でも、それも途中までで、千円札裁判あたりの話になると俄然目が離せなくなる。優柔不断だと思っていても、他の人からは「決断している」と思われていたり。当然、人の頭の中には絶対的な判断基準はないので、そういうこともあり得る。ただ、人間はあやふやなモノで、決断することは非常に多くの優柔不断のかたまりから飛び出る、ほんの少しの見える部分であることは明らかなのだ。

 決断することが多くなり、それが目立つようになることは、人間の本来持つあやふやさを痩せ細らせ、人と人との間にギザギザを作ることは言うまでもない。だからこそ、この術を学び、お互いを傷つけることを避けるよう心がける必要があるのだ。

『優柔不断術』
赤瀬川原平著
ちくま文庫 ISBN4-480-42014-2
本体680円+税

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