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2005.08.13

『カヌー犬・ガクの生涯』 野田知佑著 by 頑固な文庫読者

野田知佑 著: カヌー犬・ガクの生涯

 単純生活者。うむ。いい言葉だ。

 家を捨て、水辺で、自分の好きなように生活をする。

 単純生活者の反対語は、束縛生活者だろうか。複雑生活者ではニュアンスが違う。
 何かにしがみつき、嫌なのに掴まらずにはいられない。他人からは干渉され、自分からもあれこれとしたしがらみの中で生きている僕らは、軽く舞うように生きている人を羨ましく思いながらも関係ない世界として遠い目で見ているようなものだ。

 カヌーを生活の中心におく野田氏は、子犬のガクを身体の一部として、取り込んでしまった。ガクもまたひとりの人間として野田氏と対等に渡り合う。お互いに自由でありながら強く結びついている不思議さ。

 それに引き替え、何度も出てくるお役所仕事のバカさ加減はどうだ。
 (一見)弱いモノには強い。ユーコン川やその他多くの川を生きるか死ぬかの中で下ってきた男達に対して、表面上の力関係だけでやりとりをする人たち。自然の中の生活と都市の生活のギャップは埋まるはずがない。
 ただし、ほとんどの人は都市生活の中にあるということに気がついていないのかも。

 歳をとり、ガクの健康が害されても対等であり続ける二人。
 ガクの死後もガクの皮(ベスト)とともにある野田氏は、単純生活者同士だけの特権である結びつきを、永遠にとどめている。

 眩しいものを見るようだ。
 いきなり見てしまうと、きっと何も見えなくなる。

『カヌー犬・ガクの生涯』
野田知佑著
文春文庫 ISBN4-16-726917-1
本体533円+税

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