『悪党』 ロバート・B・パーカー著 by 頑固な文庫読者
スペンサー・シリーズの24作目。
スーザンやホーク、あるいは事件で出会う人々との会話は、いつものように軽妙で頭を回転させている様が見て取れる。ただし、何作も読んでいるともはやそれだけでは期待を担うことは難しい。
今回の物語では、二つの状況を組み込むところで打破しようとしている。
スーザンの変化と、スペンサー自体の危機。
スーザンについては物語自体の中でも空回りしている感じがあって、こなれていないし不満がある。もう少し突っ込んだものにしても良いはずだが、それを追ってしまうとサイドストーリーの範疇を越えてしまうから難しいのかも。
スペンサーは物語の後半で事件の裏方との対決で危機に陥り、そこから復活をかけることになる。この段階で、すべての問題はその一本に絞り込まれ、なんとか大団円をむかえる。
スペンサー自身の鍛錬のさまは、今までもジムでのトレーニング風景などで少しは触れられているが、今回は比べものにならないくらい厳しいものである。閉塞を余儀なくされ、最小限のサポートの中、じっくりと身体を作っていくのは、彼ならでは。
ただし、メインのストーリーとしてはさほどひねったものではないので、初めてこのシリーズを読む人でもわかりやすいと思う。逆に、ずっと読み続けている人には物足りなく感じるとも言える。
さて、本書の前半で、スペンサーが名前を尋ねられるシーンがある。
『 「名はなんというの?」
教えた。 』
う~む。スペンサーシリーズの七不思議のひとつである「スペンサーの名」はいつになったら明らかになるのであろうか(笑)
『悪党』
ロバート・B・パーカー著
ハヤカワ文庫 ISBN4-15-075683-X
本体800円+税
| 固定リンク
コメント