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2005.12.05

『珍妃の井戸』 浅田次郎著 by 頑固な文庫読者

浅田次郎〔著〕: 珍妃の井戸

 真実は関わる人々の数だけある。
 
 清朝末期に、紫禁城の片隅で殺されたとされる珍妃。皇帝から愛されていたにもかかわらず、なぜ死んだのか。
 日本、イギリス、ドイツ、ロシアの高官チームが、真実を知るとされる人々から話しを聞いていくのだが、何が本当のことで、何が違うのか分からない。人がそれぞれの場面で体験することや見聞きすることは、その人の立場や利害関係などで容易に解釈が変わっていく。翻弄される高官チーム。

 しかし、最後に皇帝から語られる珍妃の最後とは。

 ということで、もっとも愛する人を目の前で失った皇帝本人でさえ、真実を話しているのかどうか。読者はさらに混乱し、渦の中で伸ばした手が虚しく水を掻いているような状況に陥る。
 珍妃の死から逆算すれば、それぞれの話は筋道が通る。
 すべての可能性は珍妃の死につながり、関わる人々にはそれぞれの珍妃がいる。ただ、俯瞰することはできない。するべき読者においても。
 そういう意味では、物語の構成にはずるさを感じるかもしれない。

 だから、最後の、珍妃の言葉が本当に本当のことか、と言われると確信は持てないし、さらにひねりが隠されていると穿った見方も出来る。ここが読者のひねくれ度合いを測る場所なのか。

 しばらく本を閉じて、違う時間にもう一度珍妃の言葉だけを追っていくのが、この本の求めている読み方のような気もする。


 本書は『蒼穹の昴』の続編に位置するとのこと。あっしはまだ読んでいない(汗)

『珍妃の井戸』
浅田次郎著
講談社文庫 ISBN4-06-275041-4
本体円629+税

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