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2006.01.22

『なぜ起こる鉄道事故』 山之内秀一郎著 by 頑固な文庫読者

山之内秀一郎著: なぜ起こる鉄道事故

 システムの進歩は、失敗の反省から始まる。

 「万が一」というたとえは、危険な状態であるそうだ。
 安全の指標としては、1時間あたりの死亡率が1億人に1人という提言がある。これに対し、歩行者は10倍、自動車の運転は10倍から百倍危険であるのに対し、列車に乗っている場合は10分の一未満だそうだ。それだけ鉄道に乗車中の安全性は高いことになる。

 しかしながら、ひとたび事故が起きれば、多くの死傷者が出るのは昨今のニュースを見るまでもなく、「安全であることが前提」の優等生である鉄道においても、それが揺らいできているよう感じる。それでも交通事故に比べれば、という点では遙かに安全なのだが、それを不思議だと感じないことが「鉄道は安全」なことへの裏返しなのだろう。

 読み始めて先ず驚くのが、初期の鉄道において機関車にまともなブレーキがないということだった。走り始めたらいつかは止まらなければならない。通常の走行ならば全く問題ないことでも、トラブルが発生したらおしまいである。
 安全への道は、そこから始まったといってもいい。

 危険を省みないスピード競争。繰り返される人為的ミス。車両・設備の不備。それらをもれなく改善していかなければ到達できない。鉄道だけでなく、何においても似たような道をたどっている。

 ブレーキ装置、信号閉塞装置、(信号)連動装置が安全の基本であることが1世紀以上前にうたわれていた。
 きちんと止まれること。
 列車同士が近づきすぎないこと。
 列車の進路が正しく開通しており、それが信号や分岐器ときちんと連動していること。
 当たり前のことではあるが、それが現在の状況に至るまでには鉄道自体の進歩だけでなく、通信、エレクトロニクスなどの分野と一体である。一方の進歩は他方の進歩を要求し、またその逆でもある。

 過去の事故の原因を把握し、回避するために必要なことをひとつひとつ積み上げていくことだけが唯一の方法だということが、何度も何度も繰り返される。

 鉄道を題材としているが、考え方は多方面に適用できる。
 安全なシステムを作ることは止むことがない。

 ただ、裏を返せば、唯一の弱点が人間の介在である。高度なシステムになればなるほどミスにおける人為的部分の占める割合が増えてしまうだろう。しかし、完全な安全システムが存在しない限り(おそらくあり得ないだろうが)、補完するための人間の力は重要だ。
 また、安全性を判断する基準をつくるのもまた人間であることを忘れてはいけない。

 『定刻発車』(三戸祐子著)と比較すると、観点は異なるが、システムの発展する様子が生々しい。定刻発車に至る、本当の基本は本書に書かれていると言えよう。異分野の発展にも少なからず寄与すると思う。

『なぜ起こる鉄道事故』
山之内秀一郎著
朝日文庫 ISBN4-02-261479-X
本体700円+税

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コメント

僕も読みました。昨年は鉄道の事故が相次いだため、単に個別の事故に限るのではなく、鉄道と安全、という果てしない戦いを総括するのに良い本だと思いました。

Primera

投稿: Primera | 2006.01.23 00:32

仕事柄、こちらの本のほうがきちんと読めました。

実際には、昨年「定刻発車」と本書を続けて読みましたが、順番としては逆が良かったかも。

投稿: みそがい | 2006.01.24 00:31

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