« 今日の晩飯’06 7日目 | トップページ | 今日の晩飯’06 8日目 »

2006.01.07

『定刻発車』 三戸祐子著 by 頑固な文庫読者

三戸祐子著: 定刻発車

 時刻表どおりに列車が来るのは当たり前か。

 少なくとも、日本に陸蒸気が走る前から定刻発車の下地があったとは驚く。
 「あたりまえ」という感覚が根付いているのはなぜか。
 どのようにして実現しているのか。

 もともと、日本では日々の出来事が時間とともに記録される、ということが当たり前のように行われていたらしい。
 不定時法から西洋の定時法が導入されたときも、戸惑いはあったであろうが慣れるのは早かったのではないだろうか。しかも鉄道が時刻通りに発着することで利便性が高められると、より一層の密接さと正確さを求められるのも納得である。

 しかも、割合近い間隔で街が並んでいるということが、鉄道を活用するにあたって、思いがけない効果も生み出していたとのこと。それが、短い駅間の頻繁運転。密なダイヤと駅ごとのダイヤ修正が可能なシステムが発達したことになる。

 正確なダイヤを実現するためには、施設、車両、規定、そして人の力が必要である。
 陸蒸気が初めて走った日から、現在まで。緻密に発展し続ける鉄道のシステムが、まるでパノラマのように目の前に現れる気分。
 充実した内容である。

 ちょうど福知山線の事故のあとに読み終わっていたのだが、本書で触れられている「定刻発車に回復するためのテクニック」が、余裕のあるダイヤに適用されるべきモノとしてあげられている(と思われる)のが、なんとも皮肉である。

 さて、残念なのは最終章で語られている「未来」の鉄道について。
 この部分では、公共の移動手段である鉄道が「パーソナル化」に向かうことを示唆している。これは今まで築きあげてきたシステムを作り直すことに他ならない、と思う。また、乗客の悪化するマナーに関してもプライベートな空間に近づけることで解決できるような論調になっているが、筆の勢いがつきすぎだろう。細かいことかもしれないが、鉄道だけが解決策を担っている問題ではないからだ。
 鉄道は公共空間であるが故に「定刻発車」が求められているはずだ。
 せっかくの流れが、最後の最後で思い切り別の方向に行ってしまったような感じである。

『定刻発車 - 日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?』
三戸祐子著
新潮文庫 ISBN4-10-118341-4
本体590円+税

|

« 今日の晩飯’06 7日目 | トップページ | 今日の晩飯’06 8日目 »

コメント

僕も読みました。定刻を守る努力には涙ぐましいものがありますよね。JRでも朝ピーク時には一車両に駅員が一人づつ張り付いていますし、東京メトロでは、停車時間を秒単位で車掌に知らせるカウンタが設置されています(プレッシャーでしょうね。)

Primera

投稿: Primera | 2006.01.08 01:18

そうそう、地下鉄で停車時間を表示するものが見上げる位置にありました。そこまでするか、と思いましたよ。

投稿: みそがい | 2006.01.08 21:20

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/4338/8050580

この記事へのトラックバック一覧です: 『定刻発車』 三戸祐子著 by 頑固な文庫読者:

» 日本の鉄道の凄さ【書評:定刻発車 日本社会に刷り込まれた鉄道のリズム】 [marginalia:古本、読書、読書グッズのブログ]
娘と病院ごっこ。「体温計でお父さんのお熱を測ります!お父さんのお熱は・・・、82度!」 いまから20年以上前、私が高校の修学旅行で広島へ向かう途中、JR上野駅からJR東京駅まで山手線に乗らなくてはならなかった。物心がついてからは初めての山手線である。 ホームにつくと電車が発車した直後で、友達と「あーあ。」・・・ところが、すぐに次が来た。これには驚いたなあ。 「東京ってすごいね。」 そんなウブだった私もいまでは「えー、10分も待つの?」とブーたれる。いけませんねえ。 本書には日本の鉄道のすごさを端的に... [続きを読む]

受信: 2010.01.31 20:36

« 今日の晩飯’06 7日目 | トップページ | 今日の晩飯’06 8日目 »