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2006.03.19

『電子と原子核の発見』 S・ワインバーグ著 by 頑固な文庫読者

S.ワインバーグ: 電子と原子核の発見

 我々が望んでいるのは理論ではなく、それをつかみ取るまでの物語である。

 著者はノーベル賞を受賞した物理学者であるが、目は一般の「ちょっと物理学に興味のある」人々にも向いているようだ。嬉しいことである。特筆すべきは、我々の知りたいことの大部分が「いかにして物理学の理論は発見されたのか」という点の方に興味があることを見抜いていることである。

 だからこそ、本書は力学ではなく、物質は何からできているかという、原子のなりたちや、素粒子、クオークへと続く最新の物理学トピックを柱にしている(原子核の構造を解明するあたりまでが本書の大部分である)。力学などの理論はそれを説明するための道具としてほんの少し顔を出すくらい。潔い。

 なぜ電気は起きるのか。

 そんなことさえ分からなかったのに、今は原子が究極の物質では無いことを突き止めている。
 そこに至る道のりには、現象の観察、思考、実験、裏付け、など多くのハードルがある。発見は「観察&思考」の賜物だろう。凡人には、なぜその発見がなされたのか、が知りたいのだ。

 リンゴが落ちることは誰でも知っている。でも、物理学が裏側に控えていることに気がつくのはニュートンがいたからで、(その話が本当かどうかは別として)追体験することで内容をより自分のものとして取り込むことができるのだ。

 電子や原子核がいかにして現代の物理学につながっているか。
 実験道具が無くても、読めば雰囲気の一端くらいは感じることができる。ほんの少しの紙上の体験が、目に見えない物理学の形を脳味噌に刻んでくれる。

 おそらく、本書とともになんらかのビジュアル教材を組み合わせれば、オトナも子供も楽しめるものになるのではないか。
 誰だって、不思議なモノやワクワクする出来事は大好きなのだから。
 それが、この世界を形作る究極の物質につながることに気がつくのならば、なおさらである。

 途中で分からなくなっても読み切るべし。
 当たり前だ。そう簡単にすべてが分かるはずがない。
 先人が切り開き歩いてきた道を、易々と走れるわけがない。
 時折現れる「見晴台」に立ち寄るくらいがちょうどいいのだ。

『電子と原子核の発見』
スティーブン・ワインバーグ著
ちくま文庫 ISBN4-480-08967-5
本体1500円+税

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