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2007.01.14

『シネマと書店とスタジアム』 沢木耕太郎著 by 頑固な文庫読者

沢木耕太郎著: シネマと書店とスタジアム

 見えなかったものに気がつかされるのは、気持ちがいい。

 映画、本、長野冬季オリンピック、サッカーワールドカップ。
 僕の知らない映画、本、場面、選手の動き、観客の熱狂。
 知らなくても目の前に現れ動き始めるだけでなく、たとえ僕が観て、読んで、聴いて、声を上げていたとしても、単に通り過ぎていてしまっていた何かを引き戻してくれるような気がする。

 自分の経験には無いことを引き合いに出すことは、できない。
 だから、こういう評を読むことでより深い疑似体験をし、著者の考えや想いを我々読者レベルに落とし込むところまで助けてくれるのだ。残念ながら、それは一時の、ないしはすぐに薄れていくものなのかもしれないが。

 ただ一つ、おそらく自虐的に書いたと思われる部分がある。

 「批評というものがどこかに不機嫌さを隠し持っているとすれば(略)。書物というおいしい御馳走を前にしてどうしてそんな不機嫌そうな顔をしなくてはならないのか(略)」
(歯で噛みしだくのではなく、舌で味わいつくす ・・・田辺聖子『ほととぎすを待ちながら』  より)

 田辺氏の書評集を評し、それに対して書評が陥りがちな問題点を取りあげている。書評子が自分が読者であることを置き去りにしてしまうこと、への危機感が表れる。

 本や映画を評するためには、自分に取り込んできたものすべてが入ったスープにどれくらい材料を入れるのか、火加減はどうするのかといったことを見失わずに判断しなければならないのだろう。しかも、その出来上がりが他人の口に合わなければ単なる自己満足の料理に終わってしまうのだろう。

 そういう点で、自制しつつ美味しいコラムとなっているように思う。知らない料理も舌から喉へ、胃へと落ちていくように。

 逆に、スポーツを見る目は一つの事柄から、これでもかというほどの掘り下げをする。映画や本の場合とスポーツを対象とするときの視線は違うのだろうか。それとも、僕自身がそういう風に感じてしまう別の何かがあるのだろうか。

 映画、本、スポーツというそれぞれ異質の対象をひとまとめにした本書。それぞれの視線の違いを楽しむのも面白い。

『シネマと書店とスタジアム』
沢木耕太郎著
新潮文庫 ISBN4-10-123515-5
本体514円+税

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コメント

これ、単行本を買って読んだんですが、田辺氏の書評集を評したところは全然覚えてません。
引っ張り出してきて読んでみます。

投稿: マホ | 2007.01.15 18:38

まいどです。

自分で書いたものを読み直してみると、なんだか沢木氏が田辺氏の書評をどう評価したかわかんないですね(汗)
実際は褒めてます。

あっしも見習わなくてはなりません。何事にも。

投稿: みそがい | 2007.01.18 21:24

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