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2007.02.17

『父が消えた』 尾辻克彦著 by 頑固な文庫読者

尾辻 克彦: 父が消えた

 「そもそも旅行の楽しさというものは、乗り物が動くということではなかろうか」

 そうだ、そうだったのだ。家族旅行、修学旅行、一人旅、その他諸々、すべては乗り物が動くことで成立しているのだ。しかも、いつもとは反対方向に移動する。
 意識していなくても、これらのことが成り立っていれば旅行なのだ。だから、見慣れた車両に乗っていても、景色が変わるだけでワクワクするのは当たり前だったのだ。

 亡き父の墓を選びに行く。
 いつもとは逆の方向に。
 目的は、乗り物が動くことによって希薄になり、動くことが生きている自分につながる。移動した記憶は、生活を浮かび上がらせる。生きていたときの記憶。まだ生きている記憶。写真のように静止している記憶はあり得ない。たとえ写真が記憶の引き金であっても、なにかしら動きが付随しているはずだ。

 墓を選ぶことは悲しみを、旅行は楽しさを伴っている。
 物語は、悲しみを追い越してしまい、思い出と楽しさが混ざったものに変化する。人は悲しみを遠ざけたいという無意識の方向付けがなされているのではないか。だから、墓は郊外にあったり、遠いふるさとにあったりして、あまり身近には無いようにしているのかもしれない。

『父が消えた』
尾辻克彦著
河出文庫 ISBN4-309-40745-5
本体880円+税

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