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2008.01.19

『マンガの深読み、大人読み』 夏目房之介著 by 頑固な文庫読者

夏目 房之介: マンガの深読み、大人読み


 「夏目さんが、そうして深読みしてくれて(笑)。僕は本能的に描いているだけで」(ちばてつや談)

 何気なく読み飛ばしてしまいがちなマンガ。
 ページの中の、人物の動きや台詞、背景の描写や組み立て方などが、いかにしてできあがっていくのか。単なる技法の問題ではなく、陳腐な言い方ではあるが、マンガに命が吹き込まれるバックグラウンドが何であるのかを解明するのが本書の目的だ。

 第1部は「マンガ読みの快楽」。
 第2部は「『あしたのジョー』&『巨人の星』徹底分析」
 第3部は「海の向こうから読むマンガ」
となっている。圧巻は第2部。

 残念ながら、あしたのジョーも巨人の星もリアルタイムで読んでいない。逆に、アニメが先にあって、相当後になってジョーだけを読んだ。
 あしたのジョーを読んだ感想はといえば、力石との対決と死の前後で物語の色合いが変わるなぁ、といった漠然としたモノだった。もちろん、熱くなるほど面白かったことは言うまでもないが、なんとなくモヤモヤとした感じは残っていた。

 物語には、そのまっただ中にいるときには見えないことがある。原作者やマンガ家でさえも。
 書名にある「大人読み」とは、「大人買い」に対応する言葉なのだろう。一つの物語を一気に集中して読むことができるのは、連載や定期的に出版される単行本のような流れの中ではなく、自分が立ち止まることができる、あるいは、物語のポイントを自由に動き回れる、という利点をつくる。俯瞰や時間移動できることが、批評や分析をする点で重要なのだ。
 だから、冒頭に書いた言葉が出てくるのである。
 漫画家だけでなく読者も同じで、流れのまっただ中では見えないものがある。


 僕が感じていたモヤモヤ感は本書の中で明快に分析されていた。
 それを読むまで気がつかないということは、マンガ読者としてのスキルが不足しているとも言えるが、まぁその通り。

 もう一つ言えるのは、漫画誌を読むことに苦痛を覚えるような年齢になってしまったことにある。いくつもの連載漫画を毎週追えなくなってから「大人買い」「大人読み」するしかないのだ。
 それは、面白い漫画と出会う機会を減らしているのと同じであるのだが。


『マンガの深読み、大人読み』
夏目房之介著
知恵の森文庫 ISBN4-334-78448-8
本体781円+税

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