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2009.03.01

『青春の東京地図』 泉麻人著 by 頑固な文庫読者

泉 麻人: 青春の東京地図 (ちくま文庫)

「隣り町に入りこむときの恐怖、というのは、だれしも幼年時代に心あたりがあるのではないだろうか」

 なるほど!
 大人の目には境界には見えなくても、子供の瞳には高い壁のようなものが感じられたのだ。そういえば「あの通りの向こうには行ったことがない。なぜか分からないけど」という経験がある。いまでもある。そこまで行って、さらに数歩先に進めばいいだけなのに。
未だに幼年時代を引きずっているのか。

「僕の定打順もたしか六番で、守備はセカンドだった。そんなポジションに納得していた」

 あ、自分もだ。土井のファンだったからな。「いぶし銀だぜ」なんてことを口走っていた記憶もあるけど、全然上手くないから中学以降はグローブを使うこともなくなった。同時に原っぱも無くなり、公園はうるさい注意書きが並ぶようになってしまった。

 今、子供の目は、見えない地図が見えているだろうか。
 気がつかなくても、大人なって、思い出とともにその頃の地図を描き出すことが出来るのならば、それは充実した時間を過ごしていたことの証になるだろう。
 いびつだったり、つながっていなかったりする道があっても、正しい。
 なぜか大きく見えた怖い建物も、正しい。

 最新版の改訂された地図だけを体に取り込んでいるのは、とても寂しいものなのだ。
 何枚の古地図が自分の中に溶け込んでいるのか、過ごした街に帰って確かめてみたい。
 住み慣れた街から離れ、新たな場所に居を移してしばらく経つ。
 子供の頃感じた壁は、ここでは存在していないようだ。しかし、いつも通る場所、全然近寄らない場所が自然にできあがっている。なぜだろう。もう、壁を感じるだけの感受性が無くなってしまっているのかもしれないのに。あるいは、背が高くなっているのに。

 時間が経てば、その理由に気がつくだろうか。
 見えなかった壁の、見えなかった理由が。
 そして、壁をまた乗り越えた理由を。

『青春の東京地図』
泉麻人著
ちくま文庫 ISBN978-4-480-42250-7
700本体円+税

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