『二年後。自然と芸術、そして レクイエム』 (茨城県近代美術館) を観る
東日本大震災から、ちょうど2年。
そのタイミングで、この企画展が開催された。
人の暦で、2年。
はたして、その時間は何を意味するのだろう。
展示物の中で圧巻だったのは、やはり、横山大観の『生々流転』だろう。
元々国立近代美術館の所蔵品であるが、以前そこで観たときは前半部分だけが展示されていた。(後半部分は別の期間に)
今回、美術館の展示スペースの幅いっぱいを使って、丸々一巻、最初から最後までを展示。
これだけでも足を運んだ価値があった。
山奥に降る雨。
川となり、谷を下り、飛沫を立て、あるいはゆったりと。
やがて海に至り、黒い渦を巻き、再び天へと。
墨の濃淡で表された自然は、大地と植物が主体であり、人間を含む動物はほとんど登場しない。
最後の黒い渦は、一見しただけだと単なる黒一色の嵐かと思ってしまうが、よくよく見れば、将に昇らんとする大きな龍の姿が隠れている。
多分、この巻物にとって、人間は描くに値しないくらいの存在でしかないのだ。
大地に水が循環する時間。
龍の姿に変わり、再び空から舞い降りるまでの長い時間。
それが繰り返される間に、大地が音を立てたり、山の様子が変わったりするのだろう。
その中で、ほんの少しの場所と期間を人間に与えられているだけなのだ。
変化していく世界の、隙間を縫って生きている我々にとって、それ自体が取るに足らないことだと。
この感じが大観の意図に沿っているかどうかは別として、一つの作品は一度に全部観るべきだね。
期間を分けて前半・後半なんてのじゃ、作品の流れが把握しにくいもん。
(ただし、巻物の本来の鑑賞の仕方は、所定の長さを鑑賞しつつ巻いていく、らしいのだが、ホントだろうか)
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