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2014.06.20

『生誕100周年記念 中原淳一展』 (茨城県近代美術館) を観る

昨年11月にお知らせしたように、今やってます!!(終了しました)

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あっしにとっては、既に、東京三越、横浜そごう、と巡回していたときにも観に行きましたが、展示内容が同じであっても、やはり近場で時間を気にせず、ゆったりと鑑賞できるというのはいいなぁ、と思うわけですよ。

じっくりと展示物を観ていると、以前には気がつかなかった点や、より深く考えさせられることが多い。

たとえば、最初期の作品(詩画集)は、竹久夢二の影響を強く受けていることは一目でわかる。でも、それだけではなく、絵と一緒に書かれている詩も竹久夢二のものだ。
当たり前と言えば当たり前だが、絵だけを見て、そこに書かれている詩を読むだけの余裕がなければ、単に夢二の"絵の影響だけ"を受けている、という浅い理解に留まってしまうことにもなりかねない。

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淳一デザインのドレスを再現したもの。
黒いドレスは、襟や袖から少しだけ見える白い部分と、帽子、胸飾り、ポーチ、腕輪、靴まで淡いピンクで統一するなど、これを着た人だったら、どこにいても不自然ではなく万能性を持っているように感じる。
また、花柄のドレスは青空の下が似合いそうだ。
…、なんてことは、ファッション音痴のあっしがそういう感想を持てるまでじっくり見ることができるのも、今回、ここだからなのだろう。


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これは、雑誌「ひまわり」の記事にあった「3畳の空間を自分のために使えたら」といった内容の実物大サンプル。
以前観たときは、本がたくさんあるなぁ、という感想を持ったのだが、よくよく観てみると、

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壁にビール箱で作り付けられた本棚には、「それいゆ」「ひまわり」、「乙女の港」(川端康成)、「花物語」「わすれなぐさ」(吉屋信子)など、中原淳一の作った雑誌や、関係の深い作家の本で埋め尽くされている。ほかの本棚も同様。
多感な時期に、良い物語に出会うことの重要さは言うまでもないが、残念ながらこの部分だけは現代においては継承されていないように思う。ゲームや漫画では、読書の持つ想像力の底上げには、やはり追いつかないのだから。


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これは療養中に中原淳一が挿絵を描いた「七人のお姫さま」の裏表紙を飾るお姫様のドレスを、ファッションデザイナーの丸山敬太さんが再現したもの。
前回までは気がつかなかったけど、腰の部分に青い鳥がとまっていて、元絵に対してアクセントを追加している。平面でしか表現されていなかったものが、立体となると迫力を感じますねぇ。


ここまでは、以前観たものをさらに深く感じたところ。

今回、一番驚いたのは、「それいゆ」に連載されていた「スタイル画をかきたいひとへ」というものである。

中原淳一自身が持っているスタイル画の描き方を説明し、読者からの投稿に対して修正すべき点を懇切丁寧に紙面で指導しているのだ。
つまり、自分だけでなく、自分の後に続く者を育てなければならない、というところまで考えていたことを示している。
もちろん、女性がより良く、愉しく、美しく暮らすためには、自分一人の力だけでは限界があるということを分かっていたのだろう。貧しい時代から豊かな時代へ変化していくということは、それだけ多様な分岐の仕方があるということだ。少なくとも、何もかもが失われた時に示すべき道を作り、それを軌道に乗せることが、課せられた役割であったことも自覚していたはずだ。

中原淳一が病気のために表舞台から姿を消した後、どのような雑誌が生まれ、どのようなファッションや暮らしの提案がなされてきたのかは、あっしは知らない。
しかし、中原淳一が現在のファストファッションに見られるような方向を目指していたのではないことは明らかだろう。感性、アイデア、そして、自分の手を動かす、ことがその時代の確固たる信念だったのだから。

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『生誕100周年記念 中原淳一展』 ~暮らしを愉しく、美しく
茨城県近代美術館
2014/5/17 ~ 2014/7/18

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