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2014.10.26

『五重塔』 (幸田露伴著) を読む

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幸田露伴の代表作といえば、本作であることを疑う人はいないであろうが、実際に読んだ人は多くないのではないか。

かくいうあっしも大分前に文庫本を買っていたのだけど、最初のページで読む気が失せた。
現代からみれば雅文調というか、出てくる単語も難しい。振り仮名は振ってあるけど、一番目のハードルを越えるのに物凄く集中力がいる感じ。

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あらすじはというと。

大工の腕はあるが仕事がおそく世事に疎くて「のっそり」とあだ名される十兵衛。
十兵衛の親方で、谷中感応寺を建てたことがある源太。
感応寺の上人はでは新たに五重塔の建立を源太に依頼する。それを聞きつけた十兵衛は上人に自分にやらせてほしいと自ら作った雛形を持参し直談判する。
上人は二人を呼び寄せ、兄弟が力を合わせて川を渡ったという法話を聞かせ、話し合いで結論を出すよう促す。
源太は二人で塔を建てようと十兵衛に進言するが、十兵衛は源太一人で建てるよう固辞した。翌日、その経緯を上人に報告すると、既に十兵衛も同様に報告したとのこと。それを聞き、源太は十兵衛に塔の建立をすべて任せることを決め、見積もりや図面をすべて渡そうとするが、十兵衛はそれも固辞する。
自ら棟梁となった十兵衛は、陰口をたたかれていることを知りながらも地道に作業を進めるが、源太の弟子から襲われて大怪我を負う。女房から休めといわれる十兵衛であるが、耳を貸さずに現場へ赴くことで職人達も十兵衛を見直すことになる。
ようやく五重塔も落成に近づいた頃、大木や家屋を倒すほどの大嵐がやって来る。感応寺からは塔も倒れるのかと心配し、十兵衛に使いを寄越すが、上人様が自分を呼ぶはずがないし、塔も倒れはしないと追い返す。それでも上人様が呼んでいると嘘をつかれ、十兵衛は死ぬ覚悟で塔に上る。その時、塔の周りを歩く者があった。源太であった。
大嵐にも耐えた五重塔は無事落成式も済み、上人は十兵衛と源太を塔の上に呼び寄せ、二人の名前を書き記し労うのであった。


とまぁ、こういうことなんですが、信念、嫉妬、協力、自信、軽蔑、疑念、ありとあらゆる感情が渦巻く、結構おどろおどろしい物語だったのでびっくり。

それ以上に、物事にこだわることの重大さ、一徹さが人間関係を上手くするのではないという逆説的な話なのである。(物語としては一件落着となるのだけれど)

自分がすべきこと、相手に求めること、押しと引き。
自分の能力を自分で正当に評価することは難しい。すべては相対的であり、第三者の眼に委ねられる。この物語では、上人の眼が大所高所を弁えたものであるが故に、十兵衛や源太の行動の是非を読者が判定することの助けになる。
我欲に囚われる人々のぶつかりとも思える話であるが、どちらが正しいとも間違いとも言うことができない。

五重塔の世界も、過去も現在も、未来も多分変わらないのだろう。


最後に一つ言いたいのは、読みにくくても、意味がとれない部分があってもそのまま読み切るべし。やがて歌うような文体であることが分かり、酔うような印象を持つだろう。


蛇足:

カバーには「幸田露伴作」となっているが、
見開きには「蝸牛露伴著」となっている。
何故異なる記載になっているのかは分からない。
(なお、露伴の号は蝸牛庵だから間違っているのでは無いけれど)

20141026c

『五重塔』 岩波文庫
幸田露伴著

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